TR030

*******************

絶縁状態監視の保安規程上の扱い

*******************

絶縁状態監視は電技解釈上の一技術


在来方式(直流絶縁抵抗測定法)

  従来、絶縁管理は定期的に(停電し)絶縁抵抗計で測定する旨自主保安規程に記載して管轄通産局に届け出を行い、これに基づく停電点検方式により行われていました。 これは、電技第58条(低圧の電路の絶縁性能)の技術基準に適合(電気事業法第39条)しているか否かの判定作業で、開閉器などで切り離せる負荷機器を含む電路構成要素全てに対して行うものでした。





●利点

@計測器が廉価であること。

A停電可能な小規模設備の点検が容易なこと。

B絶縁物の吸湿など、物性に係る絶縁抵抗値までが計測できること。



●欠点・問題点

@停電時の絶縁が良くても通電使用中に天災人災測定漏れなどが原因して絶縁劣化が進行し火災・感電・誤動作などの障害を引き起こすことがある。

(運転中の絶縁劣化はわからず、事故が発生してはじめて気づく

A点検に停電が必要なこと。

B大規模電気設備では点検漏れがでるなど完全な点検が困難なこと。

C停電時では測定できない負荷の増加

D絶縁抵抗計の測定電圧で破損の恐れのある負荷の増加。

E僅かな不良機器の発見のため膨大な数の電路構成部の点検停電をとることは建物使用効率・生産性の点からも大きな機能損失となる場合がある。



Igr絶縁状態監視方式(代替交流漏電電力測定法)

  電気事業法関係通達「運用通達」(後述)に準拠した方法で、絶縁の状態を機械(絶縁状態監視装置)がオンラインで常時監視し警報設定(整定)値超過で警報が動作します。 警報は保安管理者に確実に伝え、警報原因を調査し危険度に対応する改修処置をします。

 警報の設定値は、当該電気工作物の事情に勘案して保安の確保を的確に行うことができるかを自己責任で判断し、運用上の決定は電気事業主(電気主任技術者)の自己責任・自主保安上の解釈に委ねることとなります。
 絶縁状態監視方式による絶縁管理に信頼が得られた上で保安規程の細則(点検表など)に監視装置による旨追加記載します。

「運用通達」 参考として電気事業法関係通達「主任技術者制度の運用について」(平成7年12月1日7資公部第418号)及びその解釈指針があります。(高圧受電設備規定JEAC 8011-2002 平成14年8月25日初版 日本電気協会 資料1-7 に収録されています)

 この解釈指針におけるIgr方式の絶縁状態監視とは、資源エネルギー庁が電気設備の保安レベルを維持し、保安業務の効率化の路を開くことを目的に改正した電気事業法関連通達「主任技術者制度の運用について」(昭和59年6月1日付)(注:既に廃止され現在は前述同名の新通達がある)において「低圧電路の絶縁状態の的確な監視が可能なもの」として誕生した方式のひとつで、電路対地間静電容量に流れる透過電流(常時漏れ電流)の多い場合に使用する方式です。

  一般的な原理は漏電電力計法とも言える方式で、絶縁計測専用の交流電圧をB種接地工事(解釈第19条)の接地線から全ての電路と大地間の絶縁部分に加え、絶縁部分が消費する電力相当分を有効分電流(IR)に換算して計測・監視・警報します。



  

●利点

@機械による活線常時監視なので絶縁障害などの不良発生時に即対処ができて重大事故を未然に防止することも可能

A電力演算を取り入れたことでラインフィルターなど対地静電容量に流れる常時漏れ電流により不必要動作をおこすこと  なく高感度での監視が可能です。

B絶縁検出用電力を系統唯一の接地(B種)箇所に起電し、これを監視電源とするので中性相(B種接地相)の絶縁劣化  も検出できる他、商用受電前の対地絶縁検出も出来ます。 
   火災緊急復旧の際、冠水負荷や焼損負荷の早期発見・安全通電のためまず絶縁状態監視装置を仮設しその監視   のもとで復旧をすすめた例があります。
  (メーカーにより中性相や停電時の絶縁が検出できない方式もありますから御注意下さい)


●欠点・問題点

@絶縁検出専用の交流による測定であるため静電容量に損失(静電容量と直列に入る抵抗分)があるとこれの並列換算 分だけIR電流が増加し見かけの絶縁を実際より低く表示することがあります
A絶縁検出用の交流は小勢力なので近似周波数の雑音があると指示値がふらつくことがあります。
B絶縁抵抗が極度に低くなると監視用の専用電圧が低下し電力演算が出来なくなるため絶縁監視が出来なくなります。  この様な地絡状態の検出は漏電(地絡)継電器により行います。

まとめ
 絶縁抵抗測定で停電時電気保安点検を行い規定通りの管理を行っても運転中に生ずる電気事故の完全な防止は不可能なことから、これを補うため漏電遮断器・漏電火災警報機などが製作され、主任技術者がこれを自己責任において自主保安の目的で(法的設置場所以外にも)使用されてきました。
 運用通達の解釈指針による「絶縁状態監視装置」は、これら漏電遮断器・漏電火災警報機・漏電継電器などの、地絡エネルギー管理の手法を基本にして「絶縁状態の的確な監視」の領域にまで管理対象を拡張したものですが、対象は電気事業法における「主任技術者不選任」に係るものです。
 従って、主任技術者選任事業所での採用については電気事業主(もしくは電気主任技術者)の自己責任・自主保安の原則に基づき決定されるもので、自社電気設備の状態(一般負荷・防爆負荷・可燃物・医療施設などなど)を勘案して主任技術者が管理値や管理方法を選択するものでいわば「活線絶縁管理ツール」ともいえるものとなります。

 


トップへ
トップへ

戻る
戻る